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誇れる地鶏文化を沖縄に作りたい。
大谷明正さんの挑戦

2015年11月17日

誇れる地鶏文化を沖縄に作りたい  「スワン大谷」こと大谷明正(おおたにあきまさ)氏。琉球ゴールデンキングスのゲームを観戦した事がある方なら一度は見かけた事がある白鳥を頭にかぶった応援団長である。その大谷氏が南城市玉城で養鶏場をオープンしたという。大谷氏の本業は焼き鳥屋さん、自社で育てた鶏を提供するそういうお店も珍しくない。だが、実際に取材してみると、ビジネスを超えた熱い思いが大谷氏を突き動かしていた。

南城市玉城で沖縄在来種「チャーン」を飼育

南城市玉城で沖縄在来種「チャーン」を飼育  大谷氏は南城市玉城にて沖縄在来地鶏で、沖縄県天然記念物の「チャーン」を飼育している。チャーンはウタイチャーンとも呼ばれ、鳴き声に特徴がある鶏で、元々は中国から渡来してきたが、中国では絶滅し、現在は沖縄にしか生息しない。鳴き終わりに「ケーケッ」という独特な鳴き声と、美しい見た目から、かつては県内でも飼育も盛んで、「チャーン鳴き声大会」も開催されていた。しかし、年々飼育者も減り、県内においてもその存在が危ぶまれており、沖縄県指定の天然記念物とされている。天然記念物なので、食肉用として提供することはできない。大谷氏はチャーンと別の鶏を掛けあわせて沖縄由来の地鶏を開発する予定だという。

沖縄に地鶏文化を根付かせたい

沖縄に地鶏文化を根付かせたい  焼き鳥屋の「白鳥(スワン)」のオーナーでもある大谷氏は、数年前に「全国やきとリンピック」に参加した。4年間、参加したものの、入賞はできなかった。上位入賞者はその土地の地鶏があり、かつ独自の調理方法が確立していた。しかも、生産者と焼き鳥屋が「地鶏の名前を売っていく」という形で、しっかりとタッグを組んでいる。そういった形が沖縄にはない。石垣牛やアグー、牛や豚は有名ブランドがあるが、鶏はまだ確立していない。また、県内はブロイラーの飼育が主流で、エサ代も高く、新しい種類の鶏を飼育しようという人が少ない。地鶏の価値をわかっていて、売り出せる自分がやるしかない。大谷氏は、「かつての自分のように、沖縄の若い人が全国で勝負したい時の武器になるような、誇りに出来るような、沖縄の地鶏を作りたい」と語った。

さまざまな人の力を借りて夢に向かう

さまざまな人の力を借りて夢に向かう  「チャーンは、鳴き声を楽しむもの」という考えから大谷氏の活動に反対する声もあった。しかし、「鶏は食べる事で名が広がり文化が残せる」。活動の真意を伝えるため、2年前からチャーン保存会の方々と交流し続けた。今は応援してもらえるようになり、2015年10月、保存会の紹介で養鶏家からチャーンを30羽譲り受けた。  「まずは、このチャーンを2016年6月までに、100羽まで増やして、別の鶏と掛け合わせて地鶏を作る予定です。2017年1月にその鶏を試食できるようにしたい」。と大谷氏。鶏の飼育には地元、南部農林高校の生徒も協力している。鶏の世話だけではなく、飼育小屋を作る段階から手伝うという貴重な経験をした事で意識が変わり、将来大学で飼料を研究し、地鶏開発に貢献したいという夢を持った子もいる。キングスをずっと応援してきた大谷氏。今回は自らが応援を受けながら地鶏開発に取り組む。

編集部 - 2015/11/17