TOPビジネス沖縄デザインを全国へ。複数の事業を展開する有限会社ビバーチェ代表取締役の新たな挑戦「アパートメント沖縄」
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沖縄デザインを全国へ。複数の事業を展開する有限会社ビバーチェ代表取締役の新たな挑戦「アパートメント沖縄」

2018年12月07日

有限会社ビバーチェ社長の「伊是名淳(いぜな あつし)」さん

『沖縄には独創的なデザイナーが多いんです』

そう話してくれたのは、有限会社ビバーチェ社長の「伊是名淳(いぜな あつし)」さんだ。

有限会社ビバーチェでは、琉球舞踊の所作をベースとした施術を行うエステサロンの経営や、紙で出来たアクセサリー「Paper Jewelry(ペーパージュエリー)」の開発・販売、各種デザインや陶芸作品の制作など、数多くのビジネスを手がけている。

そんな有限会社ビバーチェを経営する伊是名さんが、もっと沖縄のデザイン業界を盛り上げるべく、1年前から力を注いでいる事業があるという。

沖縄のデザインを全国に広める「アパートメント沖縄」

アパートメント沖縄

1年前から伊是名さんがディレクターとして関わっている事業「アパートメント沖縄」は、アパレルブランドのYOKANGやPICTURESなどをはじめとした、沖縄県内27ブランドの商品を県外・海外へ販路を開拓・発信する事業である。

沖縄のデザインは独特な魅力があり、全国に知られるべきセンスだと感じていた伊是名さん。だが現実問題として、作り手側と売り手側、発信までを兼任するデザイナーが多い中、飛行機代や滞在費、宣伝などといった活動を個人で行うのは効率が悪く非現実的だ。

「県内のデザイナーは、自分で作って自分で売っている人が多い。だから動けば動くほど生産が止まってしまう。そうすると、肝心な売り上げを上げ続けることができなくなるんです。でも県外の人に伝えたい魅力的なデザインが、ここ沖縄にはたくさんある。そこで、自分が架け橋になれないかと考えました。」

沖縄のデザインを盛り上げたい、全国に伝えたいという想いから、伊是名さんは沖縄のデザイナー達に声をかけ、自身が仲介役になるビジネスを提案した

沖縄のデザインを盛り上げたい、全国に伝えたいという想いから、伊是名さんは沖縄のデザイナー達に声をかけ、自身が仲介役になるビジネスを提案した。

「実験として交流のあるブランドに声をかけて一つのネットワークを作りました。そこから大きくなったのが『アパートメント沖縄』なんです。」

「アパートメント沖縄」は、組織ではなく一人一人の個性が集まる場所

「アパートメント沖縄」は、組織ではなく一人一人の個性が集まる場所

「この集まりを、どう表現するか主要なメンバーで考えたときに『アパート』という言葉がすごくしっくりきたんです。」

「アパートって、いろんな暮らしをしている人がそれぞれ住んでいて、時間の過ごし方ややっていることはバラバラだけども、外から見たらひとつの建物じゃないですか。それは組織ではなく、その昔、著名な漫画家たちが居住していた『トキワ荘』的な集まりにしたいと思ったんですよ。」

アパートメントのメンバーとは、次に何を仕掛けるか等を打ち合わせしたり、技術的なことを相談しあったり、時にはコラボすることもあるのだそう。

「社員を増やし、たくさんの人と向き合っていくと、どうしても一人一人との関係は薄くなってしまう。そうではなくて、自分の感性が合う人や共感できる人たちと刺激を受けあいながらモノを作り、発表していきたい。組織ではなく、アイディアを共有する個々でありたい、そんな個性を崩さず自分らしく表現する人の集まりの場所にしたいと思っています。」

「グッとくる」感性を突き詰めたことで、沖縄デザインの魅力に気付いた。

「プロはスピードも必要だ」と、アップテンポの音楽をかけながら作業する伊是名さん。
*「プロはスピードも必要だ」と、アップテンポの音楽をかけながら作業する伊是名さん。

もともとファインアート(芸術)作家になりたかった伊是名さん。県外で学んでいる最中、平面構成の課題で“自分の色彩感覚とすごく似ている。”と感じた人がいたのだそう。その人はなんと、沖縄の出身の人だったのだ。

「自分の色彩感覚は、生まれ育った沖縄で培われたものだと気付いたんです。色彩学は理論を学ベば京都の色を表現できるようになる。だけどそれにグッとくるかと言われると、こない。自分はショッキングピンクとコバルトブルーの組合せの方がグッとくる。そう気づいたんです。」

もともとファインアート(芸術)作家になりたかった伊是名さん。県外で学んでいる最中、平面構成の課題で“自分の色彩感覚とすごく似ている。”と感じた人がいたのだそう。その人はなんと、沖縄の出身の人だったのだ。

また、沖縄はアメリカに統治されていた時代、洋服を作るオーダーが多かったのだそう。当時は洋裁店が多く、そんな母親たちに育てられた子どもは「服=自分で作るもの」といった感覚の人が多いのではないか、と伊是名さんは仮説を立てた。

「島国だから、情報は入ってくるが”モノ”がない。それ故に、”材料がないなら材料から作る”というDIY精神でもの作りをする人が多いんだと思いました。だから今でも、東京の流行りには左右されず、自分たちの感覚で好きにつくっている。それがあるから、他では見ない独創性やアイデンティティを感じられる作品が多いと思うんです。」

独創的な沖縄デザインと県外百貨店の需要を結びつけた

「時代の流れとともに、買取をやらなくなった百貨店が多くなったんです。今は"ポップアップショップ”という、期間限定のショップを入れ替わりでつくり、常時新鮮にしておく売場のスタイルが主流となっていて。」

「時代の流れとともに、買取をやらなくなった百貨店が多くなったんです。今は”ポップアップショップ”という、期間限定のショップを入れ替わりでつくり、常時新鮮にしておく売場のスタイルが主流となっていて。」

そこに目を付けた伊是名さんは、県内のデザイナーと連携を図り、百貨店のニーズを汲み取った商品の提案を請け負うことに。『母の日グッズを集めてほしい』と言われればすぐに集めるなど、沖縄のデザイナーやブランドと連携を図り、県外の大手百貨店の需要を満たしながらも沖縄の新しいデザインの魅力を伝え続けた。そうすることで、大手百貨店と、沖縄のデザイン力を結びつけたのだ。

「沖縄のデザインは斬新なものが多くて、特に都会の感度の高い人にウケがいいんです。人と被らない、派手で斬新な洋服やアクセサリーを求めている人は都会にはたくさんいますからね。そういう人たちに、より沖縄デザインの魅力を知ってもらいたいと思っています。」

デザインを通して、もっとリアルな沖縄を伝えたい。

写真/Paper Jewelry
[写真/Paper Jewelry]

「今までの沖縄は、サータアンダギーや沖縄そばを物産展で売ることが多かった。だけど、もっと別の、リアルな沖縄を知ってほしいと思うんです。」

沖縄の人の気質、おおらかさ、フレンドリーな感覚など、沖縄のデザインにはそれを作る人の豊かな個性が内包されている。

「沖縄はステレオタイプに捉えられていることが多いと思います。ほとんどの人はリゾート地特有の南の楽園をイメージしてる。でも、そうじゃない沖縄もあるということを伝えたいんです。そうじゃない、クールでストイックな沖縄もあるよ、というのをもっと知ってほしいんですよ。」

今の時代はしっかりとしたコンセプトを持ち、オリジナリティがあるところだけがしっかり残っている。そんな時代だからこそ、沖縄デザインの魅力を伝えていきたいのだと語ってくれた。

沖縄県民特有の感性とこだわり、独創性が詰まった沖縄アートを全国に。アパートメント沖縄は今後、今までとは違った沖縄の魅力を全国に広めてくれるだろう。沖縄アートへの経緯と感謝、そして全国に知って欲しいという、伊是名さんの想いを強く感じることができた取材となった。

アパートメントメンバーでの飲み会風景
*アパートメントメンバーでの飲み会風景


▼アパートメント沖縄公式ページ
https://www.apartment.okinawa/

▼有限会社ビバーチェ公式ページ
http://www.vivace-life.jp/

▼Paper Jewelry公式ページ
http://paperjewelry.jp/

【アパートメント沖縄ブランド一覧】※順不同・敬称略
ASKLAR(アスクラー)/dreami(ドリーミ)/HABERU(ハベル)/HIGA(ヒガ)/育陶園(イクトウエン)/ite jewelry(アイト ジュエリー)/JEENAR(ジーナ)/JOIA DE LEQUIO(ジョイア デ レキオ)/joiejoie(ジョアジョア)/KOMINTERN(コミンテルン)/LANTANA JEWELRY(ランタナジュエリー)/moguru(モグル)/monsieur monsieur(ムッシュ ムッシュ)/nife(ニーフェ)/Paper Jewelry(ペーパージュエリー)/PICTURES(ピクチャーズ)/Create a 5ac【PIPE】(パイプ)/QUIET(クワイエット)/REHEARSAL(リハーサル)/ryukyu rogua(リュウキュウ ログア)/serumama(セルママ)/shimaai(シマアイ)/SUI(スイ)/TAB UNDERWEAR(タブ アンダーウェア)/taion(タイオン)/VIVON(ビボン)/YOKANG(ヨーカン)

三好 優実 - 2018/12/7