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上里三線店が、沖縄の伝統文化・三線の未来を切り開く

2018/08/22

沖縄の伝統文化のひとつである三線。戦前から続く上里三線店を引き継ぎ、伝統を守りながら新しいことへ挑戦を続ける株式会社エクストラネット代表・上里三線店の上里忠弘さんにお話を伺った。

上里三線店の歴史

琉球王朝時代、三線職人は王家の仕事をこなす、現代でいうところの公務員だった。忠弘さんの父・上里忠造さんも三線職人で、口数の少ない職人気質であったが、「我が家は尚真王の流れを汲んでいる」ということをしきりに話していたそうだ。それを証明する資料や文献は残っていないが、戦前には三線店を開業していて、13歳から兄弟で三線を造っていたという忠造さんの妻(現在95才)の証言から、100年以上続く上里三線店であることは間違いない。

忠弘さんは長男ではあったが、弟の忠邦さんで三線店の引き継いでいたので、当初は家業である三線店を継ぐ気はなかったという。「サラリーマンの方が儲かる時代で、わざわざ儲けが少ない仕事をしようという気にはならなかった。しかし、会社員を何年も続けているうちに父も高齢になり、伝統を継承しなければという気持ちや、自営業に挑戦してみたいという気持ちが湧いてきた」と話してくれた。

忠弘さんが引き継いでからは、インターネットでも販売を始め、インターネット上の屋号は「三線工房ゆい」とした。

戻らないカラクイの開発

三線は、カラクイと呼ばれる糸巻きで弦を巻き上げて音程を調整する。従来のカラクイは、同じ竿との間でわずかな摩擦力しか働かず、弦を巻いてもすぐに戻り緩んでしまうことが多かった。初心者や県外・国外で独学する人にとっては、練習前に立ちはばかる難関であり、カラクイが折れてしまうことも多い。

忠弘さんは、経験やコツに頼らず、誰でも簡単に使えるカラクイが必要だと考え、「戻らない」カラクイの制作に取り組んだ。3年にわたる試行錯誤の末、ついに2016年「戻らない」カラクイの開発に成功した。

この特殊カラクイは、アルミに合成樹脂の取手を付けたもの。安価で、軽く回すだけで「切れるほど巻き上げても弦はほぼ戻らない」という。取手をさらに太くすれば、さらに調弦に使う力は少なくて済み、手の不自由な人やお年寄りでも使いやすい。

また、従来のカラクイよりも耐朽性に優れており、プロ演奏家からは「カラクイは割れやすく予備が必須だが、丈夫な戻らないカラクイはその必要がない」と好評を得ている。

あと100年残したい、沖縄の伝統曲

「音楽は明日を生きる力になる。三線を弾ける人も弾けない人も、古典・民謡に親しんで欲しい」という忠弘さんの想いから、練習用DVDを無料貸与(返却期限1年以内)している。

練習用DVDには、「唐船ドーイ」「かぎやで風」の2曲が収録されている。男女で音程が違うため、2曲それぞれ男性版、女性版を作った。「唐船ドーイ」男性版は琉球民謡伝統協会の儀間正雄副会長、女性版は民謡歌手の我如古より子さん、「かぎやで風」男性版は琉球古典音楽野村流音楽協会師範の新垣和則さん、女性版は伊良波ゆかりさん、訳詞・解説を島唄解説人の小浜司さんが、いずれもボランティアで協力した。

忠弘さんは「“口伝式”という伝承方式も一緒に残したい」と話してくれた。みーなれちちなれ(見て聞いて)で学ぶ、昔ながらの“口伝式”にするため、練習用DVDに工工四(三線の楽譜)の掲載は一切ない。演奏を四つのパートに分け、1区分ごとにスローなテンポで弾く場面があるなど、覚えやすいように工夫されている。

三線工房ゆいの熱意溢れる取り組みで、三線の曲はこれからも沖縄の人々に愛され続けるに違いない。


【三線工房ゆい】株式会社エクストラネット沖縄
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編集部 - 2018/08/22