TOP商品開発障がいのある子や親もお出かけしやすい社会へ。ココロとカラダを守るイヤーマフ専門店ブランド「ハレトケ」をOEMで展開。
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障がいのある子や親もお出かけしやすい社会へ。ココロとカラダを守るイヤーマフ専門店ブランド「ハレトケ」をOEMで展開。

2024年08月27日

 

前回は、東京と沖縄の2拠点生活や1年の育児休暇についてお話を伺ったが、今回は代表を務めるハレトケ合同会社の新事業についてお話を伺った。

(2021年9月:https://journal.ryukyu/people/2460

 

◆コロナ禍から、afterコロナになっての変化

ハレトケ合同会社の主な事業は、教育関連。その他にも動画制作や広報関連の事業を営んでいる。

代表の石川さんは東京にある認定NPO法人フローレンスの広報で働いていた経歴もあり、東京でzoomやYoutubeなどオンライン配信のスキルに長けていた。

コロナでライブ配信への需要が急速に高まったことで、売り上げはオンライン関係を中心に一気に伸びていき医療関係者やNPO繋がりのソーシャルセクターから、講演や会議、研修などのライブビューイングの配信業務を依頼されることが多かったという。

ところが、コロナが落ち着き、オンラインの必要性がなくなった途端に仕事は減少。予算や決定権はクライアントにあって、選ばれなかったらそれで終わり。という受注型のビジネス構造に行き詰まりを感じた石川さんは、ハレトケ合同会社で「モノを作って売る」新事業を立ち上げることに。

 

◆なんのために働くのか

3.11をきっかけに、売り上げを伸ばすとか、お金を稼ぐというよりも、「社会課題を解決したい」という想いが強くなったという石川さん。

新卒でもNPO、転職でもNPOを選んで働いてきたほど、社会課題、特に障がい児保育や子育て支援にやりがいを感じていた。石川さんは「障がいのある子ども達のパパママが、仕事と育児を両立できる、普通に幸せに暮らせる社会にしたい」と力強く話す。

東京のNPOで働いていた時は、法律改正のために衆議院会館へ通うなど、ロビイングという手法で社会を変える活動を行なってきた。しかし、沖縄ではそういった活動は難しいため自分たちがここでできる社会解決手段はなんだろうと考えた先が、「子ども用イヤーマフ」だった。

 

◆イヤーマフにした理由

石川さんが新卒で障がい児の学童現場で働いていた頃、イヤーマフを付けている子ども達に出会った。

一見すると「ヘッドフォン?何聴いてるんだろう?」と思われがちなイヤーマフだが、聴覚過敏の子が音の刺激を和らげるために身につけるもの。発達障がいのある子で聴覚過敏があると、そわそわして落ち着かなかったり、身体的な症状が現れることが多く、最近多いと言われているHSC(※1)の子も、同様の悩みを持っていた。

大人でも眩しい時にサングラスを付けるように、イヤーマフで耳を守ってあげることで、穏やかに過ごしやすくなる。そんなイヤーマフとの出会いから10年数年経って、改めてイヤーマフの商品を見てみると、10年前とあまり変わっていないおらずその変わっていないイヤーマフを、「子どもが使うにはデザインも機能性も課題がある」と捉えていた。

そもそも工事現場など騒音環境で働く大人向けに作られた商品なので、遮音性が高く、汚れが目立たない為に黒か、作業場で目立つ為に真っ赤、真っ黄色といったカラーが主流。

働いていた学童にいた子ども達は、イヤーマフを使いたくても、重かったり締め付けが強かったりして、痛がってよく外していたという。他にも様々な課題があり、子どもたちが使いやすいイヤーマフを作ろう!と開発を決意。

 

◆こだわりの商品をOEMで製造

 

ハレトケ合同会社は工場を持っている訳ではないので、OEM(※2)で作ることに。国内生産だとコストがかかるため、中国の工場へ生産を依頼。通訳を雇い、リモートでやりとりを重ねて商品を開発した。

デザインと機能性には、とにかくこだわった。出来上がった「おでかけが楽しみになるようなイヤーマフ」は、見た目もおしゃれで、カラーはブルー、ピンク、ライトグリーン。現在はイエローとディープグリーンを追加して5色展開している。

機能面では、通常のイヤーマフだと30〜40dBで設定される遮音値を、25dBと低く設定。小さな雑音は聞こえないが、大人の話しかける声は聞こえるくらいの遮音性だ。授業中にも利用できる。この、大人の声が聞こえるという点が、道で危険を知らせたりする時など、お出かけ時に非常に重要。イヤーマフをつける子も、与える側も安心して使用できる。そして、この商品を見て最初に驚くのが、その大きさ。

イヤーマフと聞いて想像していたよりも数倍コンパクトで軽い。製品重量は、業界最軽量部の165g。また、双子の弟でもある小児科医師と共同開発されている。児童発達支援員の資格を持つ石川レンさんと、小児科医の石川ケイさんの、まさに“レンケイ(連携)プレイ”で誕生した商品だ。この商品がきっと、世間のイヤーマフのイメージを覆していくだろう。

 

◆リサーチの重要性

 

受託するビジネスだけでなく、商品を持つビジネスにシフトし始めたハレトケ合同会社。

石川さんがOEMをやってみて感じたことは、リサーチの重要性だ。新事業で一番怖かったのは「これ本当に売れるの?」というところ。実は最初、「ファザーズバック」を作ろうと考えていたという。

1年間育休をとっていた石川さんは、お父さん用の育児バッグがないことに気づいた。女性向けにデザインされたマザーズバックは世の中にたくさんあって、お父さんがマザーズバックを持っても問題はないけれど、どうせなら、カッコ良いデザインの「ファザースバック」があったら良いなと思ったのだ。このバックで楽しくワンオペできるお父さんを増やそうと。ところが、調べてみると「ファザーズバック」のニーズが無い。

Amazonで検索しても数が少ない。自身ではニーズがあると思っていたけれど、世間的にはニーズがないことが分かったので、「ファザーズバック」を作ることは断念したという。まずは、マーケットインという考え方で、ニーズのある商品、売れる商品を作っていく。商品が売れるようになってブランド化して、ラインナップが揃った状態で、プロダクトアウト。自分たちが作りたいと思う商品を作っていく方が、良いステップになる。そう考え、イヤーマフ開発前後には様々なリサーチを行い、ニーズに合わせた機能やデザインに仕上げていった。

 

◆反響と今後の展開

現在、イヤーマフの販売はAmazonで行なっておりAmazonで販売するメリットは、自社で倉庫を持たなくて良いこと。

楽天も同様だが、プラットフォーム(Amazon)の倉庫を利用できるシステムがあることでかなり助かっているという。こだわりの商品開発やマーケットリサーチが功を奏し、ハレトケのイヤーマフは販売開始直後から売り上げ好調。Amazonのカスタマーレビューも4.3と高評価だ。「大きな音が苦手な子と一緒に、花火大会に行けるようになった」、「お守りとして、いつも持ち歩いている」と称賛や感謝を伝えるコメントも多数寄せられている。

今後は“OEMで商品を開発して販売する”というこの事業を、子育て世代や、障がいのある子を持つパパママにシェアしていきたいと考えている。仕事を区分けできるので、短時間でしか働けない人にも参加してもらうことが可能だ。「みんなで障がいのある子たちのためになる商品を作れば、良いサイクルが生まれるはず。なんなら、ノウハウは全部持っていって独立してもらって良い。」と話す石川さん。「障がいのある子ども達も、そのパパママも幸せに暮らせる社会にしたい」という目標に向かって、着実に歩みを進めている。社会課題にビジネスで立ち向かうハレトケ合同会社に、今後も注目していきたい。

 

▼ハレトケ公式サイト

https://faretoqe.jp/

 

▼Amazon販売ページ

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0CRQGTH69

 

※1 HSC(Highly Sensitive Child)。感受性が高く、環境刺激に敏感に反応する子ども

※2 OEM(Original Equipment Manufacturing)生産者側の開発品を相手先のブランド名で供給する製造形態。この場合は、依頼主(ブランド側)が製品の仕様を決め、完成した製品の管理権と所有権を依頼主が持つ。

投稿者プロフィール

翁長奈七
翁長奈七
沖縄県那覇市出身。二児の母。
沖縄の子育てを応援するフリーマガジン「たいようのえくぼ」と、その姉妹冊子・沖縄の部活動を応援するフリーマガジン「たいようのFight!」のデザイナーを務める。
県内向けおでかけ情報サイト「ちゅらとく」ライター。

翁長奈七 - 2024/08/27