沖縄から世界へ。譜久里武さんが語るアスリート工房への想いと今後の展望
「スポーツビジネス×地域」が無限の可能性を切り拓く
2019年10月25日
Tweet日本人で初めて、40歳以上で100m10秒台を記録したことで有名な譜久里武さん。
2018年には世界マスターズ大会の400mリレーで金メダルを獲得し、今なお現役選手として世界を舞台に挑戦を続ける譜久里さんは、沖縄で陸上クラブ・アスリート工房を設立、運営している。
沖縄でスポーツをビジネスとして成り立たせるのは難しいと言われるなか、着実に成長を遂げているアスリート工房の魅力に迫った。
◆アスリート工房設立までの軌跡
2013年、譜久里さんは100mでのメダル獲得を目標に掲げ、世界マスターズ陸上競技選手権ブラジル大会に出場。
タレントの武井壮さんも同大会に出場し、同じ目標を宣言したことから、ライバルとしてメディアからも注目されていた。
大会では見事に準優勝を果たし銀メダルを獲得した譜久里さんは、ブラジルからの帰りの飛行機のなかで「今まで応援してきてくれた方々のためにも、これからは恩返しをしていきたい」と考えたのがアスリート工房立ち上げのきっかけになったという。
当時経営していた会社を引き継ぎ、陸上クラブ設立のために奔走するなか、「スポーツで飯は食えない」「やめたほうが良い」と批判的な意見を受けることも多かったという。
しかし、譜久里さんは「自分が陸上に関する仕事をすることで、喜んでくれる人がたくさんいる。人が喜ぶことをするのだから、ビジネスとしても成功すると確信していた」と話してくれた。
その信念と行動の結果、現在では沖縄県内外合わせて11教室、約500名のクラブ会員を有する一大クラブへと成長を遂げている。
◆だれでも参加できるクラブを
アスリート工房では、どんな人にもスポーツに親しんでほしいという想いから、幅広い年代・カテゴリーのクラスが用意されている。
年齢や障がいの有無に関わらず、だれでも入会が可能だ。
また、教室はさまざまな地域にあるが、どの教室でも同じアップメニュー、トレーニング指導が受けられるようになっている。
譜久里さんは、「子ども達には勝つためだけでなく、まわりに応援されるような人になるよう日頃から話しています。
アスリート工房のスローガンは〝剣禅一如〟。
宮本武蔵の言葉ですが、技を極めるためには心の修行も大切だという意味。技術をアップさせるだけでなく、心も磨いていくようなクラブにしていきたいです」と教室の理念を語ってくれた。
日本の陸上界トップ選手を講師に招く機会もあり、その知識を体系化して練習メニューに取り入れるなど、トップアスリートを目指す人にとっても、好ましい環境が整っている。
◆応援されるクラブ、地域を元気にするクラブ
アスリート工房では、スポーツ鬼ごっこの資格を持つコーチが在籍しており、スポーツ鬼ごっこの大会に出場する機会もある。
また、ラグビー協会と連携してラグビーコースも設けられており、「走る」から派生した様々なコンテンツが充実している。
成人向けのボディメイキングや健康増進目的のコースから、トップアスリートを目指すコースまで、本当に様々なニーズに応えられるクラブだ。
譜久里さんが来ているTシャツやアスリート工房のHPには、たくさんのスポンサー企業のロゴがついている。
「宣伝的な意味合いよりも、この活動を応援したいという気持ちで支援してくれる企業がほどんどです。これからのスポーツビジネスは〝応援型〟になってくると思いますね」と話してくれた。
待機児童問題を目にした譜久里さんは、アスリート工房の学童クラブも設立。
「スポーツを通じて、地域を元気に明るくすることを理念にしている」と話し、陸上クラブの枠にとらわれずに柔軟な発想で地域への「恩返し」を続けている。
その取り組みは、県外の大学やスポーツ省が視察に来るなど全国からも注目を集めている。
◆走る楽しさを発信
譜久里さんの陸上競技に関する知識は、インターネットや各メディアを通じて惜しみなく発信されている。
自身のインスタグラムやツイッター、Youtubeチャンネルで速く走るコツやトレーニング方法などが紹介されており、たくさんの人に〝走る楽しさ〟を伝えようとしていることが感じられる。
WEBコーチでも指導しており、個人それぞれに合わせたプログラムづくりも可能だ。
実際の教室では、譜久里さんをはじめ日本のトップ選手が指導に訪れる機会も多く、トップ選手と間近で触れ合うことができるのもアスリート工房の魅力となっているようだ。
譜久里さんは「アスリート工房は全国展開し、たくさんの子ども達やマスターズ世代が夢と希望を持てるような環境を作っていきたい。アスリート工房プログラムをつくり、フランチャイズなどで全国展開を考えています」と今後の展望を話してくれた。
教室に通う子ども達からは「コーチよりも速くなりたい」という声が聞こえ、未来のメダリストがアスリート工房から誕生する気配。
沖縄から全国へ、そして世界で活躍しようとする譜久里さんの姿勢は、陸上競技でもアスリート工房でも、夢の実現のために常に前を向いて走っている。
◆譜久里武オフィシャルサイト
https://www.fukuzato.net/
◆アスリート工房HP
https://athlete-koubou.okinawa/
◆Youtubeチャンネルfuku
https://www.youtube.com/channel/
UCVMVyH_lLcK5C8mE4Nik2Mg
◆譜久里武Instagram
https://www.instagram.com/fukuzatotakeshi/
投稿者プロフィール
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沖縄県那覇市出身。二児の母。
沖縄の子育てを応援するフリーマガジン「たいようのえくぼ」と、その姉妹冊子・沖縄の部活動を応援するフリーマガジン「たいようのFight!」のデザイナーを務める。
県内向けおでかけ情報サイト「ちゅらとく」ライター。
翁長奈七 - 2019/10/25
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