美容と健康をつくるパーソナルジム「スタイリッシュ」
代表の荻野さんが目指す、元依存症患者の社会復帰の場所
2020年01月29日
Tweetスタイリッシュの3つの特徴
2020年1月、沖縄県那覇市にパーソナルジム「スタイリッシュ」がオープンした。
「ケトジェニック」「ファスティング」「スーパーサーキットトレーニング」の三本柱で健康づくりをサポートするのがこのジムの特徴だ。
ケトジェニックとは、脂質中心の食事にすることによって、糖質を中心に燃やす・シュガーバーンの体質から、脂質を中心に燃やす・ファットバーンの体質へ変化させるダイエット方法。また、ファスティングとは、一定期間固形物をとらないことによって消化器官を休ませ、身体の中をリセットするダイエット方法。水分と酵素を摂取することで同時にデトックス効果も期待できる。
どちらも、素人判断で実践するとかえって体に負担がかかり危険な場合もあるので要注意だ。
スタイリッシュでは、トレーナーとしての知識と経験が豊富な荻野さんがカウンセリングを行い、講習会やチャット、LINEで毎日の食事を指導してくれる。また、ジムではその人に合わせたサーキットトレーニングのメニューを組み立てる。サーキットトレーニングは短時間でも効果が高く、ケトジェニックやファスティングで燃えやすくなった身体の脂肪を、効率的に燃焼させることができる。
その人に合わせたきめ細かな指導
本格的なトレーニング器具も揃っており、完全“パーソナル”ジムなので、他のお客さんなどの目が気にならないのも魅力。重りの重さやステップ台の高さも、その人に合った負荷で調整してくれるので安心だ。
トレーニング中は、アップテンポな音楽と荻野さんの掛け声で楽しい雰囲気。
健康と美容への意識が高まっている現代、「ケトジェニック」「ファスティング」「サーキットトレーニング」の三つが揃ったパーソナルジムは今後も注目を集めそうだ。そんなスタイリッシュの設立には、荻野さんの過去が大きく影響しているという。
薬物依存の過去から救ってくれた沖縄ダルク
荻野さんは以前、薬物依存症だった。
父親が暴力を振るうような荒れた家庭環境の中で幼少期を過ごしたという。
「父がいるときは常に“戦争状態”だった。父が家にいない時、家は平和なはずなのに、身体は違和感を感じていて…。“戦争状態”が日常だったから、父がいない平和な状況は“非日常”になっていたんだと思います」と当時を振り返る。
荻野さんが最初に薬物に手を染めてしまったのは、高校を卒業する頃。
父が仕事を辞めて常に家にいるようになったこと、恋人と別れてしまったことや、大学受験に失敗して浪人生として過ごすことになったことが重なり、人生で最も辛い時期に、薬物に手をだしてしまったという。
「こんなことを言うと不謹慎だと思われるかもしれませんが、あのとき薬物がなければ死んでいたかもしれません」と荻野さん。その後、荻野さんが高校生から40歳頃まで、薬物依存との戦いが続いた。
薬物依存に陥っていた期間に、お金も、健康も、人間関係も全て失ったという。数ヶ月、数年間は辞めることは出来ても完全に断ち切ることは難しく、自分ではもうどうにもならないと悟り、依存症の回復施設である「沖縄ダルク」への入所を決意した。
元依存症患者というレッテルと戦う
薬物依存の他にも、アルコールやギャンブル、仕事依存症など、様々な依存症に悩む人たちと共同生活をおくる沖縄ダルク。
他人との密度の濃い共同生活では、相手の立場を考え思いやる癖がついたという。そこでしっかりと自分の過去と向き合い、回復を果たした荻野さん。
しかし、施設を出て就職してからも「元薬物依存症患者」という過去は消えない。
職場で差別的な扱いを受けた経験もあり、次第に薬物依存症だった過去を隠すようになった。隠していても、いつかバレてしまうのではないかと怯えながら過ごす日々はストレスを生み、心を病んでしまいそうだったという。
荻野さんは「自分の過去をオープンにして、さらに同じ境遇で苦しんでいる人達のために何かしたい」という想いから、独立してパーソナルジムを開くことを決意した。
スタイリッシュへの想いと荻野さんの挑戦
スタイリッシュで、トレーニンングだけでなく「ケトジェニック」や「ファスティング」にも重きをおいている理由は、ずばり「心と身体の健康のため」。荻野さん自身も日々実践していて、身体の調子の良さを実感するという。
ファスティングは固形物をとらないことで空腹感や仕事への影響を心配される人も多いそうだが、それもしっかりと手順を踏めば仕事にも影響なく取り組めるそう。
また、荻野さんはパーソナルジムの経営に加えて、もうひとつ挑戦していることがある。それは、依存症から回復した人たちの就労支援。
「元依存症患者ということで、低賃金な労働環境にしか身を置けないことも多いです。でも、専門的な知識や技術があれば、よりよい職場環境が望める。私の場合は、大学や現場で身につけたダイエットやトレーニングに関する知識があるので、この知識を元依存症の方々へお伝えすることで、社会復帰のお手伝いができればと考えています」と荻野さん。
依存症から回復した人たちの受け皿となるような施設をつくろうと、同じ志の仲間に声をかけ、プログラミングや造園技術など、様々な専門分野を学べる環境づくりを進めている。
荻野さんの挑戦はまだ始まったばかり。
依存症という過去を持つ人も堂々と生きていける社会は、どんな人にも優しい社会ではないだろうか。今後も荻野さんの挑戦に注目していきたい。
【スタイリッシュHP】
https://peraichi.com/landing_pages/view/49asb
投稿者プロフィール
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沖縄県那覇市出身。二児の母。
沖縄の子育てを応援するフリーマガジン「たいようのえくぼ」と、その姉妹冊子・沖縄の部活動を応援するフリーマガジン「たいようのFight!」のデザイナーを務める。
県内向けおでかけ情報サイト「ちゅらとく」ライター。
翁長奈七 - 2020/01/29
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