TOPビジネス「専門性が高まると、自分の居場所ができる」沖縄の若手起業家が語る雇用論
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「専門性が高まると、自分の居場所ができる」
沖縄の若手起業家が語る雇用論

2019年05月20日

県内初の動画を使った求人サイト「オキナビ」というサイトをご存知だろうか。オキナビは動画で職場の雰囲気や先輩社員のコメントなどを閲覧できる求人サイトのことで、「企業側と求人側の双方のニーズに応えられる求人サイト」として幅広く支持されている。

この動画求人サイトを手掛けているのが、「株式会社プロアライアンス」(以下:プロアライアンス)。代表取締役は、東京の大手リクルート企業にて、数々の企業・求職者と寄り添いながら多くのマッチングを成功させた「大城 佑斗(おおしろ ゆうと)」さん。

その資金と経験を基にして代表取締役として就任した「株式会社プロアライアンス」では、現在「オキナビ」の運営だけではなく、映像制作、WEB制作、観光推進事業、医療施設内におけるコンビニエンスストア経営など、数々の事業を手掛けている。

大城さんが就任して5年目、プロアライアンスにはフリーランスとして稼いでいた方や大手企業からの独立を図った方など、続々とハイスキルな人材が集まっているという話を耳にした。なぜ、プロアライアンスには優秀な人材ばかりが名乗りを挙げるのだろうか。そこには、大城さんの「雇用」への考え方にヒントがあるようだ。

大城さんの「雇用」への考え方

起業家である大城さんは、仕事において「専門性」と「調和」を特に重視しているのだそうだ。

大城さん「プロアライアンスの人材採用における軸は、専門性を持った個人が、既存スタッフや会社組織に綺麗に調和するかを見ています。例えば、専門性を強く持っていても、人間関係や社風にマッチしないなどの理由で退職に至るケースも少なくないと思います。それは悲しいことです。専門性を持った方の“個性”が『社風』『事業内容』『既存スタッフ』等と綺麗に調和するからこそ、その専門性が最大限に発揮されるわけです。」

そして、一人ひとりのプロとしての専門性を信用しているため、実際の仕事は、個々に任せることが多いとのこと。そのため、社員がそれぞれやりがいを感じながら働ける、というわけだ。

このスタンスは、プロアライアンスのコンセプト「One Impact Can Change The World ~一人の影響力は世界を変えることができる~」にも反映されている。

大城さんが社員一人ひとりとしっかりと向き合い、また一人ひとりを信用しているからこそ、皆が生き生きと働き続けられるのだ。実力が認められ、裁量に任せる環境づくりができていることで、多くの優秀な人材が集まるのも頷ける。

大城さんが「専門性」にこだわるようになったのは、実は過去の経験にも関係がある。

大城さん「昔、人材会社の社員としてテレアポを中心に営業活動をしていました。リーマンショックの影響で就職氷河期となっており、なかなかアポイントを取れない時期が続きました。その時にふと考えたのが”今の市場(マーケット)はどこも同じ。であれば将来的に活況となる業界を予想し、且つ当時、誰も当たっていないような業界に将来的な人材確保の電話をすればアポイントが取れるのではないか?”ということです。」

周囲が真っ先に思い付くような思考ではなく、市場全体の動向や成長を分析し、先を見通すことで、結果として功を奏した。この考え方と実体験こそが、後に大城さんの、そしてプロアライアンスへの基礎へと繋がっていく。

大城さん「結果的に、営業未開拓であった建築不動産業界において多くのアポイントを取ることに成功し、求人依頼の件数も徐々に伸びてきました。しかし、求人件数が伸びても実際にそれらの企業に応募する人がいなかったという課題にも直面しました。一時期は上司から“決まらない案件を持ってくる奴”だと思われていたと思います(苦笑)。

そこで悔しくて、過去に登録いただいた人材に電話をかけ色々とヒアリングをしてみました。すると、“建築の仕事をしているものの転職を考えている”という方がとても多くいました。そこで、建築不動産業界について徹底的に調べていくうちに求職者と企業側のマッチング成功件数も伸び、いつの間にか僕は“社内で一番建築不動産業界に詳しい人”になっていました。」

社内では、その行動力と専門性が評価され、一つのチームを立ち上げるまでにも至ったという。こういった経験を経て、「専門性が高まると、自分の居場所ができる」という法則が生まれたのだ。

その結果として、プロアライアンスは、それぞれの「専門家」が調和したプロ集団として機能している。

大城さんの視点で見る「経営」とは

大城さんは「専門性×調和」という発想で、ビジネスを考えている。

その理念は会社名の由来にもなっており、「プロフェッショナル(専門)」と「アライアンス(同盟)」の2語を組み合わせたのが、「プロアライアンス」なのだ。

大城さんは、インタビューでこう語る。

大城さん「例えば、もし営業分野が弱いと感じたら、営業が強い人材とタッグを組む。この『補填』を繰り返していくことで、それぞれの個を活かしたプロフェッショナル集団が完成していくのです。」

化学反応のように、異なる個性が調和することで、まったく新しい価値を生み出していく。これこそが、大城さんが一貫して掲げる、経営の基本なのだ。

大城さんの経営は、自身の経験の集大成

大城さんはもともと、東京で年収4桁を稼ぎ出すトップセールスマンとして活躍していた。

なぜその年収を捨て、いち経営者として活動するに至ったのか?そこには、サラリーマン時代に培った経験が関係している。

大城さん「東京では、営業職として2社を経験しました。2社のどちらも“人”を相手に話す職業なので、必然的に、『この人にはどういう話し方をしたら良いのだろう』『思うように成績が伸びないときはどこを改善すれば良いのだろう』など、自ら考える力を身に付けていきました。たとえ無理と思えるような目標でも、最初から諦めず『じゃあ、できるようになるにはどうすれば良いのか』と、自分なりに創意工夫をしていったんです。」

目標へ向けた道のりを、自ら工夫して計画していく。その不屈の精神こそが、今日の経営に生かされているのかもしれない。

大城さん「転機だったのは、2社目に経験した人材会社です。コンサルタントという立場から、経営者の方と話をする機会も多く恵まれ、僕自身が経営に興味を持つようになったのです。また求人側と求職者の両方のマッチング経験を積んできたので、自然と“人を見る目”が培われていたことも、起業家としてやっていく決断への後押しとなりました。」

自身のルーツが詰まった「沖縄」で会社を経営

これまでの経験を大いに活かし、どこで勝負するのか?それを考えたときに、自身のルーツが詰まった「沖縄」という場所を選択した。

大城さん「沖縄という場所を選択した理由はいくつかありますが、ひとつは元々沖縄には親族も多く、情勢や雇用課題について考えさせられる機会が多かったということがあります。そういった中で、縁がある沖縄のさらなる発展に貢献したいという想いを以前から強く持っていました。

また、そのタイミングで後継者不足で事業承継に課題を抱える経営者と出会い、話をする中で、結果として株式を買い取ることで会社経営の道をスタートしました。買収型起業という道を選択したことで、既存事業の譲渡や不採算事業の立て直しなどを経験することができたのは大きかったです。」

そして、貯めた資金を基にリリースしたのが、動画求人サイト「オキナビ」。人材会社での経験を生かし、企業側と求職側、双方にとっての“伝わりやすさ”を意識した。

大城さん「当時の沖縄は、求人情報を発信している媒体が少なく、さらに『離職率が高い』『給料が低い』など、ネガティブ要素が目立っていました。それを知った時に、過去の経験が蘇ってきたんです。“皆が真っ先に思い付くような業界ではなく、あえて誰も思い付かないような業界を”・・・と意識して成功した経験があったので、今回もこのマイナスの面に、“あえて向き合っていこう”と考えたのです。誰も思い付かないような角度から挑んで、成功する。この成功のための道のりを考えることは、僕にとって、とても面白いことですから。」

大城さんの経営は、過去の体験や教訓がそのままバックボーンとなっているのだ。

プロアライアンスの今後の展望

大城さんが就任してから5期目を迎える、プロアライアンス。大城さんや社員たちは、いったい目的地としてどこを見据えながら走っているのか。

大城さん「大きい目標としては、海外進出です。沖縄だけに留まらず、最終的には世界まで活躍の場を広げていきたいと考えています。今、県外の大手企業も外資系企業も、続々と沖縄進出を計画しています。沖縄はこれから、さらにめざましい変貌を遂げていくはずです。そのときに、社員を大切にしてこなかった会社は、優秀な人材をどんどん引き抜かれてしまう。私たちは、社員それぞれがお互いに認め合い、それぞれの個性を大事に切磋琢磨しながら、魅力的な会社を作っていきます。」

ーありがとうございました!

取材を通して感じたことがある。大城さんはどんな質問をしても、ひとつとして曖昧な回答をしないのだ。

それは、会社員として働いていた時代から、常に“考えること”と“見ること”から逃げなかったからなのだろう。全ての物事において『自分の答え』を探すことの大切さを感じる取材となった。


◆株式会社プロアライアンス企業ページ
https://proalliance.jp/
◆動画求人サイト「オキナビ」
https://oki-navi.jp/

三好 優実 - 2019/05/20