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「時代と共に変わるものと変わらないものがある」売上を5倍にし、新たな挑戦を繰り返す上間弁当天ぷら店2代目社長の想いとは

2019年08月27日

沖縄天ぷらでおなじみの「上間弁当天ぷら店」を営む「株式会社上間フードアンドライフ」の2代目社長である上間 喜壽(うえま よしかず)さん。2億の負債を抱えたまま2代目として受け継ぎ、経営をV字回復させただけでなく、7年間で売上を1億から約5倍の5億まで増やした上間さん。その後も沖縄ファミリーマートと連携したホットフード販売や、ケータリングサービス「CATER4U.」の設立、再建ノウハウを活かした企業経営のコンサルティング会社「U&I株式会社」の設立など、勢いが止まらない。

沖縄天ぷらでおなじみの「上間弁当天ぷら店」を営む「株式会社上間フードアンドライフ」の2代目社長である上間 喜壽(うえま よしかず)さん。

2億の負債を抱えたまま2代目として受け継ぎ、経営をV字回復させただけでなく、7年間で売上を1億から約5倍の5億まで増やした上間さん。その後も沖縄ファミリーマートと連携したホットフード販売や、ケータリングサービス「CATER4U.」の設立、再建ノウハウを活かした企業経営のコンサルティング会社「U&I株式会社」の設立など、勢いが止まらない。

そんな沖縄経済の未来を担う実業家であり革命家でもある上間さんに、上間弁当天ぷら再建の歴史と新たな挑戦の数々について話を伺った。

受け継いだ当初、なんと負債額は2億円!

上間弁当天ぷら店のスタートは、約47年前のこと。元々漁師をやっていた祖父が、刺身店を始めたのがきっかけだった。刺身店を営む上で、売れ残った刺身を商品にするため、天ぷらの販売を始めたのだそうだ。

上間弁当天ぷら店のスタートは、約47年前のこと。元々漁師をやっていた祖父が、刺身店を始めたのがきっかけだった。刺身店を営む上で、売れ残った刺身を商品にするため、天ぷらの販売を始めたのだそうだ。

上間さん
最初は天ぷら屋としてではなく、作った天ぷらを商店に卸して販売していました。その後天ぷら屋として沖縄市に1号店をオープンし、現在の『上間天ぷら』が誕生したんです。それを僕の両親が“のれん分け”という形で引き継ぐこととなりました。その後、両親が何年か経営したのちに、東京に住んでいた僕に2代目をやらないかという話が来たんです。

当時、東京で大学に通っていた上間さんは、継ぐつもりではなかったと話す。

上間さん
実家に帰省した際に、両親から『上間弁当天ぷら店を継がないか』という話を受けました。沖縄に帰りたいという気持ちがあったので、その時はラッキーだと思い、軽い気持ちで継ぐことにしたんです。

ラッキーだと思った矢先、ずさんな経営管理により領収書などを管理していなかったことが原因で、税務署調査で約8千万円の罰金が発生した。「ラッキー」から一転し、突如「大変」がのしかかってきたのだ。

覚悟の決め手となったのは「居場所」。家族が集まる場所をなくしたくなかった

覚悟の決め手となったのは「居場所」。家族が集まる場所をなくしたくなかった

当時、工場を建てたばかりということもあり、突然合計2億の負債を抱えてしまった上間弁当天ぷら店。あまりにも膨大な負債を目の当たりにした上間さんは、恐る恐る「継がなかったらどうなるのか」を聞いてみたそう。

上間さん
返ってきた答えは『あんたがやらないなら辞める』でした。そうなると実家は差し押さえになり、店も家もなくし、ゼロからのスタートになると告げられたんです。店と実家ありきで育ってきた僕は、家族の拠り所がなくなることにすごく抵抗を感じました。

家族が仲良く、家族で働くというのが染み付いていたと言う上間さん。どうしてもその決断は避けたいと思い、自己破産などについて調べたのだそう。結果として「トライしてダメだったら自己破産しよう。」と覚悟し、継ぐ決断をした。

上間さんが継いだ当初、最初に投資したのは「パソコン」だった。実はこれまでの経営管理はなんとノート一冊。しかもその日に仕入れたものの金額と売上が毎日メモとして残っていたのみだった。もちろん領収書や月ごとの利益なども書かれておらず、給料についてもノートに書かれているだけだったのだ。

「まずは数字を把握しなければ」、そう思った上間さんは数字の管理を徹底した。ノートでは分からなかった原価や客数なども全てデータ化し、管理・分析したのだ。それにより、もともと繁盛店だった上間弁当天ぷら店は、数字管理と分析、仕組みや過剰なサービスの見直しや工場を活用したケータリングサービスの展開などにより、徐々に経営はV字回復。その後売上は約5倍と、急成長を遂げた。

今思えば「莫大な負債があって良かった」。マイナスだからこそ挑戦できた

写真は現在の経営を管理する集計シート。IT企業並みの数字管理だ。また、上間さんの仕事部屋にはお店を引き継いだ当初から買い集めた本が大量にある。会社勤めをした経験がない上間さんは、自ら切り開くために様々な知識を習得し、都度挑戦を繰り返した。

写真は現在の経営を管理する集計シート。IT企業並みの数字管理だ。

また、上間さんの仕事部屋にはお店を引き継いだ当初から買い集めた本が大量にある。会社勤めをした経験がない上間さんは、自ら切り開くために様々な知識を習得し、都度挑戦を繰り返した。

上間さん
当時は苦しいことの連続でしたが、今思えば当時多額の負債があって良かったと思う点が2つあります。ひとつは、額が額だけにプレッシャーが大きかったこと。少しうまくいっただけでは多額の負債は減らないので、仕事をだらだらやらない癖がつきました。

ふたつめは、破滅的な環境だったからこそ、何をやっても許される環境だったこと。僕は実験が好きなんですが、うまくいっていると『現状でうまくいっているから変えない方がいい』とストッパーがかかってしまうこともあると思いますが、負債だらけだったことで、本や人から得た知識をすぐにチャレンジできたんです。

上間さんは、経営を回復させた今もなお、常に新しいことにチャレンジしている。例えば新しい管理アプリを取り入れるなど、時代に合わせたシステムの導入や、新規事業の開拓だ。2017年には、経営回復のリアルな経験を活かしたコンサルティング会社の設立も行った。

苦しい環境を乗り越えたからこそ、人気店だからというおごりを持つことなく、常に新しいことに挑戦する。常に現状で満足しないことで生まれるものがある、ということを感じさせられた。

やられて怖いことは「一緒にやろう」。沖縄ファミリーマートでのホットフード販売

やられて怖いことは「一緒にやろう」。沖縄ファミリーマートでのホットフード販売

経営を回復し、老舗沖縄天ぷら店として沖縄県民に愛される「上間弁当天ぷら店」だが、戦略を考える上で恐れていたことがあった。それは「コンビニによる沖縄天ぷらの販売」だ。大手であり24時間営業、気軽に立ち寄れるコンビニで、沖縄天ぷらを販売されてしまうと痛い。

そう考えた上間さんは、沖縄ファミリーマート会長に「上間天ぷら」のホットフード販売を提案。双方のメリットが確立できたことからすぐさま話は具体化し、2019年にホットフードとしての販売がスタートした。

ここで、コンビニホットフードとしての販売というと「監修」という言葉が思い浮かぶだろう。だが、実は沖縄ファミリーマートで販売される上間天ぷらは全て、上間弁当天ぷら店でつくられたものを独自の製法で凍結し、再現できる仕組みをつくり提供している。

実は上間さんは、この話が具体化する前、イベントに使用するため特殊な凍結機を購入していたのだそうだ。購入の目的であったイベントでの活用は失敗に終わったが、コンビニでのホットフード販売という形でこの機械が大いに役に立った。この凍結機を利用して、上間天ぷらの味をコンビニで提供できるよう、試行錯誤を行ったところ、成功に至ったのだ。

失敗は成功のもとだとよく耳にするが、新しい挑戦を繰り返す上間さんだからこそ、失敗を成功に繋げることができたのだろう。現在は、ホットフード用の工場の建設を進めており、現在の販売店舗数57店舗でから、来年に向けて沖縄県内325全店舗での販売を予定している。

「変えるもの・変えないもの」を時代に合わせて判断する

この「沖縄ファミリーマートでの販売」において、決定の一番の決め手となったのが「天ぷらを商店に卸す」という上間天ぷら発祥のルーツだ。上間さん「昔でいう商店の現代版が『コンビニ』です。商店からスタートした上間天ぷらが、現在コンビニで並ぶというのはとてもメモリアルなこと。変わらないものと変わるものがそこにある、という点がまさに理念そのものだと感じました。まさにこれだ!やろう!と思いましたね。」

この「沖縄ファミリーマートでの販売」において、決定の一番の決め手となったのが「天ぷらを商店に卸す」という上間天ぷら発祥のルーツだ。

上間さん
昔でいう商店の現代版が『コンビニ』です。商店からスタートした上間天ぷらが、現在コンビニで並ぶというのはとてもメモリアルなこと。変わらないものと変わるものがそこにある、という点がまさに理念そのものだと感じました。まさにこれだ!やろう!と思いましたね。

この話を聞いて、胸が熱くなった。先代から引き継いだ秘伝の味と魂を、現代の販促に乗せて届けているのだ。時代にあわせて変わるべきところは変えながら次世代に伝えていくこと、その大切さを感じる取材となった。


◆上間弁当天ぷら店公式サイト
https://uemabento.com/

◆ケータリング事業「CATER4U.」公式サイト
https://cater4u.jp/

◆U&I株式会社の公式サイト
https://u-and-i.co.jp/

三好 優実 - 2019/08/27