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「魅力に気づくまでに何年もかかった。」石垣島の藍を使用したファッションブランドBigot(ビゴ)とは

2018年10月24日

石垣島で育った藍染を使用したファッションブランド「Bigot(ビゴ)」。“日常に藍を”をコンセプトに、藍独特の色合いを用いた洋服やアクセサリーを取り扱うブランドだ。今回は、そのBigotを立ち上げた石垣島出身の「高階 志文(たかしな しもん」さんに話を伺ってきた。

「日常に藍を」。それを実現しようと思ったのは、石垣を離れたことがきっかけだった。

「最初は藍でものづくりをしようなんて、思っていなかったんです。」

高階さんが生まれ育ったのは、石垣島の藍染工房。藍を土から育て上げ、発酵から染めまでを一環して制作している工房だ。

生まれた時から石垣を離れるまでの間、いつもそばにあったという「藍」。最初は藍でものづくりをしようなんて、思っていなかったのだそう。

「藍染って、発酵するとき独特の匂いがするんですよ。小学生の時はそれがいやでたまらなかった。匂いや手間に耐えて完成するものの価値が、あの頃の僕は分からなかったんですよね。」

そう思いながらも、母は藍染職人、父は建築という血筋からか、“ものづくり”の面白さというのは感じており、高校を卒業後、デザインの専門学校へ行き、そこであらゆる工業デザインを勉強した。

その後、中国に留学し、バングラデシュで鞄の作成を手掛けたのち、世界中のデザイン技術を見ていく中で、“石垣島の藍はやっぱりすごい!”と思ったのだという。

「母ちゃんのやってることって、実はすごいことなんじゃないか・・!」

そう気づいたことがきっかけで、藍で何かがしたいと考えるようになったそうだ。その後、なんとか母の作り上げて来た世界観をより多くの人に伝える方法はないかと考えた結果、Webで物を売れる力をつけようと思い、勉強のため通販の会社に入ったそうだ。

伝統工芸である藍をどう残していくか。そこに向き合った結果、ファッションという選択に。

Webでものを売る技術を学んだのち生み出したのが、ファッションブランド「Bigot」だ。なぜファッションで体現したのか?という問いに、高階さんはこう答えた。

「“伝統工芸、お高いんでしょ?!”のイメージがあると思うんですけど、昔の人は作業着として使っていたほど、藍は身近なものなんです。防虫効果とかもあるから蚊も寄せ付けないし。それくらい石垣の人にとっては馴染みがあるものなんですよ。」

「でもやっぱり、昔の人にとって馴染みがあるものでも時代とともにすたれてしまう。伝統工芸を伝統工芸のまま伝えていっても、現代の人には浸透しないと思ったんです。」

“生まれ育った石垣の藍をどういう形で残していくべきなのか”ということを高階さんは考えたのだ。そこに向き合った結果、ファッションに行き着いた。

今後は、洋服にこだわらず、人の思い出の一部になるような面白いデザインをしたい。

「実は、ファッションの概念にとらわれず、“藍染でこういうことしちゃう?!”を狙っているんです。(笑)」

Bigotの作品には、洋服やアクセサリーだけでなく、ガラス作家さんとコラボしたオセロなどもある。人と人とが楽しむ「遊び」にも藍を取り入れることで「日常」に藍を忍ばせているのだ。

「みんなが着られるように、若い人でも馴染みやすいように。そういう想いでファッションという形を選びましたが、もちろんザ・洋服もあるけど、今後はカーテンとかもやってみたい。ファッションは一個の形であって、まだ最終形ではないんです。」

今は沖縄のビジネスについて勉強をしつつ、いつか石垣に戻って藍染体験とかもできるような民宿のようなコンセプトハウスを作りたいと、未来への展望を語ってくれた。

今後の展望は「地域ごとデザインする」こと

「実は、勝手に沖縄に感謝しているんです。(笑)」

デザインを学ぶために東京に上京した時、沖縄の、しかも離島出身ということで、周りの人がとても親切にしてくれたのだそうだ。そこで石垣島に感謝の気持ちが生まれ、いつからか石垣島に恩返しがしたいという気持ちを持ち始めたのだそう。

「楽しいことでお金を稼いでいる人の1人になりたい、という気持ちももちろんあって、それを若い人にも伝えていくような活動をしたいんです。例えば、中学生や高校生を巻き込んで、ものづくり体験をしてもらって、空港やWebでものを売るとか。」

「自分たちの島の資源で外貨を稼げますよということを、若い人に体感してもらいたいんです。自分たちが作ったものの価値を生み出し、それを世の中にさらけ出す。それが売れる。その経験があれば、石垣島に帰って来てお金を稼ぐイメージが沸くと思うんですよ。石垣島を、みんなが帰ってて来たくなる場所にしたいんです。」

ただ藍染ブランドをやりましょう、ではなく、体験も含めたブランドにしていきたいのだそうだ。観光や地域振興を学ぶため、現在は観光事業に特化した会社で働いている。

藍だけではなく、藍染を通して地域全体の魅力を発信していきたいのだと話してくれた。

高階さんにとって藍とは?

「生活の一部ですね。生まれた時からいつもそばにあったし、自分は藍に育てられたと言っても過言ではないんです(笑)。だって母はそれで生計を立てていたので。今思うと、ずっと心の中にあったのだと思います。」

昔はわからなかった価値、多くのデザインを学び、多くの土地を知ったからこそ、今になって、なぜ母が”藍”を選んだのか、なぜ母がこれに没頭し、作り続けてきたのかが、ほんの少しだけわかったのだと言う。

母の生き方を尊敬し、それを残したい気持ちが込められたBigotは、ある意味、高階さんとお母さんが生まれた時から作り上げてきたブランドだとも言えるだろう。

英語で“頑固者”という意味を持つ「Bigot」。“頑固な人がやっていることが、日常に入ってくる”というこだわりを込めて名付けられたブランド名は、語られた想いにぴったりな名前だと感じた。

Bigotの価値

Bigotの洋服は1着2万円〜3万円が相場だ。高いと思うかもしれない。私も最初はそう思った。けれど彼の言葉にはっとした。

「藍染って、すごく手間がかかるんです。つくる生地分の布をカットして、1日中染め作業の繰り返し。つまり1着のために平気で数日かけるんです。母の命(時間)を切り売りしているのだから、その価値をきちんと考えないといけない。」

高いものには理由がある。

上質な生地にかかる費用はもちろんのこと、長い間藍を染め続けた人の愛情がある。手間がある。決して手を抜かない。楽をしない。届ける人への思いやりが詰まっているのだ。

その計り知れない価値、それを身につけた瞬間の幸福度を考えると、この価格設定は安いくらいだろう。

是非一生に一度は、購入したいし購入して欲しい商品だと思った。


▼Bigotの販売サイトはこちら
https://www.creema.jp/c/bigot-blue/item/onsale

▼公式ページはこちら
https://bigot-blue.com/

投稿者プロフィール

三好 優実
三好 優実
香川県出身・沖縄移住歴4年のフリーランス編集者・ライター。主に沖縄県内の観光・グルメ・経済について執筆。シリーズ本「香川県あるある」の著者。

三好 優実 - 2018/10/24