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沖縄から世界へ。ファッションブランド「HIGA」に込められた想いとは

2018年12月28日

沖縄のファッションブランド「HIGA」を創り出した比嘉 一成(ひが いっせい)さん

『沖縄から世界へ。』

CMでよく耳にする言葉だ。この希望に溢れた言葉『沖縄から世界へ』を、ファッションの世界で実現しようとしている人がいる。

沖縄のファッションブランド「HIGA」を創り出した比嘉 一成(ひが いっせい)さんだ。

「HIGA」は、“どこにいても自分らしくいられる服”をコンセプトとしたファッションブランド。比嘉さんは、東京にて9年間メーカーで様々なブランドの商品開発に携わった後、沖縄に帰り、ファッションブランドHIGAを立ち上げた(当時は、屋号であるCOVER(カバー)という名前だった)。

沖縄に帰り、たった2か月でブランドの立ち上げを実施

沖縄に帰り、たった2か月でブランドの立ち上げを実施

比嘉さんは、9年前の5月に沖縄に帰ってきて、7月にブランドを立ち上げたそうだ。

ーめちゃくちゃ早くないですか?

「実はブランドの構想自体は、5年前からあったんです。もっと言うと、学生時代からずっと自分のブランドを立ち上げたいと思っていて。メーカーに務めながら、あらゆるブランドに携わっていたので、蓄積したノウハウがあったんです。ずっと温めていたので、沖縄に来てからは早かったですね。」

自身が培ったノウハウを元にやっていこうと決意し、沖縄でブランドを立ち上げた。

比嘉さんは沖縄に帰ると決めたとき、会社の人から「沖縄でアパレルはできないよ」と言われたのだそう。そんな言葉を受けながらも、自身が培ったノウハウを元にやっていこうと決意し、沖縄でブランドを立ち上げた。

さらに、7月に立ち上げたのち、9月に六本木で開催された合同展示会に参加した。

この時期は東京コレクションのシーズンで、これ目当てにメディアやスタイリスト、バイヤーなどの業界関係者が集まるのだそうだ。バイヤーを集めるという目的でもあったのだそうだが、ブランドを立ち上げ、企画デザインから生産、展示会に参加するまでを約2ヶ月半でこなすスピード感はなかなか出せるものではないだろう。

また、早いだけではなく、何といっても商品が魅力的だ。洋服のデザインがとても洗練されており、一目見ただけで引き寄せられる。東京や海外などでも人気が集まりそうなこのブランドだが、実は各所に沖縄らしさを散りばめたデザインのものがある。

「たとえばこの作品は、クバの葉で作られたクバオージという沖縄の民具を、羽のようにアレンジして流れをつくった柄なんです。沖縄らしさを全面に押し出すのではなく、あくまで散りばめることにこだわっています。」

「たとえばこの作品は、クバの葉で作られたクバオージという沖縄の民具を、羽のようにアレンジして流れをつくった柄なんです。沖縄らしさを全面に押し出すのではなく、あくまで散りばめることにこだわっています。」

「デザインだけじゃなく素材にもこだわっていて、この「染料プリント」は沖縄で本格的にできる工場がないので、京都で染めています。でも今後は、沖縄ももっとアパレルに精通する場所にしたい。僕の商品がもっと精通すれば、素材の工場もできるかもしれないし、もっともっと沖縄地産地消の服をつくっていきたいと思っています。」

実は沖縄に帰ってきたばかりのとき、服飾の講師も行っていたという比嘉さん。その時に“沖縄からファッションに携わる人をもっと輩出したい”と思ったのだそう。ただ比嘉さんは、ファッションの分野においては、教えるものではなく“感じてもらう”ことが一番だと考えた。

「僕は先生じゃだめだ、と思いました。教えるのではなく、見て憧れてもらえるようなファッションをつくり続けることを目指した方が、良いと思ったんですよ。」

「東京コレクション(2016 S/S Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO)」に参加!沖縄に拠点を置くブランドとして初となった

写真提供:東京コレクションでの演出
[写真提供:東京コレクションでの演出]


比嘉さんはそんな想いの中、“ブランドとして何かを変えなければいけない”と考え、2015年、日本のファッションシーンにおける一番公式な場である東京コレクションへの出展を決意した。

どうやって参加できるか探していた時、東京コレクション出展ブランド募集を見た比嘉さんは、ダメ元で応募してみたのだそう。

「見ている側だったので憧れはあったものの、まさか自分が参加できるとは思っていませんでした。でも、出展の通知が来てからは早かったですね。日本のファッション業界における素晴らしい演出家の方がいて、その方たちに助けてもらいながらやりました。打ち合わせがある度に東京に飛んでましたね。準備も、半月くらい借りたウイークリーマンションでスタイリストさんとかモデルさんとか、ぎゅうぎゅう詰めでやりましたよ(笑)」

「沖縄を代表する意味でも、恥じないようなものを出さなければいけない」

沖縄に拠点を置くブランドとしては初出展となった比嘉さんは「沖縄を代表する意味でも、恥じないようなものを出さなければいけない」と思ったのだそうだ。

ブーゲンビレアやガジュマルの樹皮など、沖縄を連想させるアイテムや、ショーの演出としてブルーライトを採用し、琉球藍染を表現したりなど、直接的ではなく間接的に沖縄を表現する方法でショーに挑んだ。

「担当してくれた演出家が、沖縄の『琉球藍』が印象的だと言ってくれたんです。それをヒントに、沖縄の深く碧い海の中をモデルさんが歩いていくようなイメージに仕上げてくれました。」

▼比嘉さんが参加した2016年S/S fashion weak TOKYO公式ページはこちら
https://amazonfashionweektokyo.com/jp/brands/detail/higa/

比嘉さんにとって沖縄でファッションをやることの意味

沖縄でファッションブランドを立ち上げることに周囲からの反対はあったものの、“ここに帰ってきてよかった”と比嘉さんは言う。

沖縄でファッションブランドを立ち上げることに周囲からの反対はあったものの、“ここに帰ってきてよかった”と比嘉さんは言う。

「東京と違って、沖縄は島国です。東京は都会で、魅力的ではあるんですけど、沖縄も日本にとって、すごく魅力的な場所だと思っています。誰かの真似とか2番手ではなく、最先端で発信している人がたくさんいるんです。沖縄がファッションでかっこいい人・ものがあるらしいよ、有名なところがあるらしいよ、みたいな存在にしたいと思っています。」

また、沖縄は自然との距離が近く、オンオフを切り替えることができることが人間的でいいと、比嘉さんは話す。

「東京だと逃げ場がないように思います。自分が東京で発信しなかったのは、沖縄から発信したいという気持ちが強かったんです。ここなら、地に足をつけて自分らしいデザインができるんじゃないかと思いました。帰ってきてよかったと思います。」

ファッションブランド「HIGA」の今後の展開

ファッションブランド「HIGA」の今後の展開

「『沖縄から世界へ』を、本当にやれたらいいなと思っています。沖縄は甲子園とか安室ちゃんとか、すごい影響力を持った人たちがいっぱいいて、僕も小さい頃から色んなものに影響を受けて生きてきました。だから僕は僕のジャンルで、沖縄から東京、世界に規模を拡大していければと思っています。」

実は比嘉さんは数年前に、ブランド名を屋号である「COVER」から「HIGA」に変更している。

「COVERには2つの意味があって、ひとつは『カバー=洋服で体を包む』という意味、もうひとつは、沖縄の方言で『匂い』という意味があるんです。洋服は着て初めて元気になれるものだと思っていて、そこに至るまでに、自分の感覚と合うと感じる“匂い”の引き寄せがあると思うんですよ。それでこの名前でやっていたんですけど、大手セレクトショップや海外からの引き合いもあり、ブランドをより強固なものにしたいと思いました。」

大手セレクトショップや海外からの引き合いをきっかけに、より「沖縄から世界へ」を意識した比嘉さんは、自身の苗字であり沖縄らしさのある「HIGA」に名前を変えたのだそう。名前の変更は、まさに沖縄から世界へ発信するという、挑戦を込めたメッセージでもあるのだ。

「ファッションで人を元気にしたい」と語る比嘉さんは、穏やかで物腰柔らかな人柄の中に、野心と強い覚悟を秘めている『強い人』という印象。洋服1着1着からは、そんな比嘉さんの強さと柔らかさが伝わってくるようだった。

「ファッションで人を元気にしたい」と語る比嘉さんは、穏やかで物腰柔らかな人柄の中に、野心と強い覚悟を秘めている『強い人』という印象。洋服1着1着からは、そんな比嘉さんの強さと柔らかさが伝わってくるようだった。

関連記事:https://journal.ryukyu/business/1726
(沖縄デザインを全国に伝える「アパートメント沖縄」:伊是名淳さんインタビュー)


▼「HIGA」公式ページはこちら
HP/http://www.higa.jp
FB/https://www.facebook.com/HIGA-252956458060655/

三好 優実 - 2018/12/28