TOPスポーツ沖縄から世界へ !女子サッカークラブ琉球DEIGOS(デイゴス)の挑戦 (前編)
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沖縄から世界へ !女子サッカークラブ琉球DEIGOS(デイゴス)の挑戦 (前編)

2016年09月15日

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琉球DEIGOS(以下:デイゴス)は沖縄県を拠点に活動する女子サッカークラブ。 2014年7月にチームが発足。2015年シーズンは沖縄県勢初の皇后杯出場を果たし、2016年シーズンから九州女子サッカー2部リーグへ参入している。デイゴスを運営する株式会社沖縄ウィメンズスポーツクラブ代表の神川 大樹(かみかわ ひろき)氏に、お話を伺った。 

 

県内女子サッカーの底上げのために発足した「琉球DEIGOS 

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インタビュアー城間 (以下:城間)
本日はどうぞ宜しくお願いいたします。早速ですが‥デイゴスを立ち上げるきっかけについて教えて下さい。

 

神川 大樹(以下:神川)
はい。実は沖縄県は女子サッカーの競技人口比率でいうと、日本でダントツ一番なんですよ。ご存知でした?(※競技人口数は東京、埼玉に続いて全国3位) 

 

城間
いえ、初めて知りました! 

 

神川
沖縄は隠れた女子サッカー王国なんです。ですが、高校、大学と進むに連れて、県外にプレーの場を求めたり、サッカーそのものを辞めてしまう選手も多いんです‥ 

 

城間
そうなんですね‥それぞれ事情があるとは思いますが、勿体ないですね。 

 

神川
「沖縄でもっと女子サッカーが盛んにならないのか?何かできることがないのか」と思って始めました。ですけど、サッカークラブといえど資金が必要なんです。参考にいうと、国内の男子サッカートップカテゴリのJ1でも数十億の資金が必要なんです。 

 

城間
海外のクラブもそうですけど、やっぱりお金かかりますねー。 

 

神川
まあ、それは男子サッカーの場合で、女子サッカーチームではどうなのか?というと、澤穂希(さわ ほまれ)選手も所属していたINAC神戸というチームがありますが、実は、運営費は2億円程度。海外女子サッカーの強豪、フランスのリヨンでも3億。「もしかしたら、沖縄からでも世界一のチームが作れるのかもしれない」という夢が出来ました。実際、うちでもカテゴリは九州リーグですが、運営には数千万もの予算が必要なんです。 

 

城間
チームとして運営するためには、どのような取り組みで資金造成していますか? 

 

神川
スポンサー集めが基本中の基本ですが、それとは別にイベント事業を行うことで売上を立てている状況ですね。もともと僕が大手旅行代理店に勤めていた時に、「美ら島沖縄センチュリーラン」という自転車のイベントをみんなで立ち上げたんですよ。DEIGOSの運営費を全部補填というわけにはいかないけれど、そのノウハウを活かすことで、少しでも多くの資金を確保することに努めています。 

 

城間
チームを立ち上げたとき、苦労した事は何ですか? 

 

神川
やっぱり選手集めですかね。僕がチームを運営するようになった初めは、選手が4人しかいなかった。そこで、キャプテンに何か欲しいものはないかと聞くと、紅白戦が出来る環境にして欲しいと言われて、次の年に3人獲得して、やっと試合ができるようになり、2016年には新たに14名の選手が加わり現在のチームになりました。 立ち上げ当初は大会へ出場するにもぎりぎりの人数の中頑張ってくれた創設メンバーのおかげで、今のデイゴスがあると思っています。 

 

城間
選手それぞれの環境について聞かせて欲しいのですが。 

 

神川
沖縄県出身と県外出身の所属選手がいます。学生から社会人まで所属しており、社会人選手は日中それぞれの職場で働きながら練習に励んでいます。少しでもプレーに専念してもらえるように、家賃の補助や就職先の斡旋をしています。現在はトップチーム選手でも、プロ契約は出来ないので。現役学生の選手が3人いますが、そのうち2人は今年卒業するので、その子たちの就職先ももちろん探しています。 

 

城間
ちなみに、どういう会社を紹介しているんですか? 

 

神川
現在、観光系やスポーツショップなど様々な職種の企業で雇用していただいています。 

中でも大手警備会社に就職している選手が多く、その会社に「全選手うちで雇わせてくれ」というお話もありました。選手を社員として働かせていただきながら、その会社の宣伝を担う形でスポンサーになっていただいております。 

 

城間
選手の環境を整えるのも大事なんですね。 

 

神川
私自身も大学時代にフェンシングやってまして、競技者の目線でも考えているんですよ。学生時代からスポーツに取り組んできた人は、キャリアの選択肢がものすごく限られている。ほとんどが教員で、教員になれない人は苦労する。僕自身も苦労したので、スポーツに打ち込んできた人が引退した後のキャリアがしっかり描けるような仕組みも作りたいなと。 

 

「でいご」の花言葉のように「活力」「夢」を与えたい。 

14215734_1129585797134491_837427262_o※写真撮影金武町フットボールセンター

城間
どんな特色のチームにしたいですか? 

 

神川
「明るくて親しみやすいチームにしたい」と思っています。プレイスタイルは「きちんとパスを繋ぐよう意識し、観客が見ていて面白いサッカーをする。」実際に見に来てくれたらわかると思います(笑) 

 

城間
明るくて親しみやすいと言いますが、ファンの方以外でも県民の方にはどう接していますか? 

 

神川
僕としては、選手にはあまりプロ、プロしてほしくない。どちらかといえば「そこらへんにいる姉ちゃん」みたいな親しみやすさでいて欲しいと思っています。仮になでしこリーグ一部に昇格できたとしても、そこは変わらないでいてほしいですね。「チームが上位リーグへ昇格した途端、選手間の上下関係が今まで以上に厳しくなったり、チーム内部の雰囲気が変わった」という理由で、前のチームを辞めてウチに入団した選手もいますので。 

 

城間
沖縄の中でこういった影響を与えたい、逆にこういった影響を受けたいというのはありますか? 

 

神川
うちのチームは中城村(なかぐすくそん)、北中城村(きたなかぐすくそん)、金武町(きんちょう)、西原町(にしはらちょう)、浦添市(うらそえし)、恩納村(おんなそん)をホームグラウンドにしています。この中で、北中城村と浦添市は練習場として、それ以外の市町村では試合をしようと考えています。できる事なら沖縄全域で試合がしたい(笑) 

 

城間
たくさんホームがありますね(笑) 

 

神川
なぜそうしたいかというと、人口の関係もありますが、那覇市や浦添市にはたくさん女子サッカーのチームがあるけど、北部にはほとんど無いんです。そうなるとこちらから出向くしかないじゃないですか。うちの選手を見て、小さい子がサッカーを始めたいと思ってくれれば嬉しいですし、各地で一試合ずつはきちんとしたい。 
南部は浦添、中部は北中城、北部は金武というふうに、それぞれの玄関口として考えています。中北部出身選手にポテンシャルを感じていまして、スター選手が出てきたら、最高ですね。 

 

城間
チーム構成についてはどうお考えですか? 

 

神川
理想は、選手の半分は沖縄県出身者であってほしい。現在県出身で、県外で活躍している女子サッカー選手は、仙台に2人、愛媛に2人、この4人くらいしかいないんです。4人って少ないですよね。僕がこのチームを作った目的の中で、沖縄県でサッカーをしている選手の受け皿になると同時に、県外で活躍する選手がいずれ沖縄に戻ってきたいと思ったときの受け皿となりたいという考えもあってですね。去年まで広島と南葛でプレーしていた選手2人は、今年うちに入団しました。もちろん、チーム内での育成にも取り組みたいので、去年は県内の大卒選手も3、4人入団しています。 

 

 

城間
あ、あと沖縄は東アジアの玄関口ですし、国際色豊かになるのも面白いですよね! 

 

神川
そうなんです!実はですね、台湾に安室奈美恵に似た顔立ちの選手がいて、サッカーも上手いから狙っています。ただ、あとは言葉の問題ですね。(笑)これは将来的な話になりますが、うちなーんちゅは、色々な国に移民しているという歴史的背景がありますので、移民の子孫とか、様々な選手が入団出来たら面白いなと。あと、ベース(基地)の学生とか身体能力も高くて伸ばしがいがあるんですけど、高校になるとアメリカに帰ってしまうことが多い点が難しいところです。 

 

城間
試合内容は勿論ですが、エンターテイメントとして観客を楽しませる要素が必要になってくると思いますが、何かお考えはありますか? 

 

神川
違う競技ですが、琉球ゴールデンキングスがあれだけ盛り上がるのは、実力もさることながら、観客からフィールドが近く、選手もチアリーダーも間近で見られ、ステージ演出も派手にできる。しかしそれは、室内競技だから出来るという事もあります。サッカーは屋外ですし、観客との距離もあるので、そっくり真似する事は出来ない。そこをどうするかが課題です。

同じ女子サッカーでの例でいうと、日本代表の宮間選手が在籍する岡山湯郷ベルは、実はおじいちゃんやおばあちゃんの観客が多いそうです。おそらく、選手を孫娘のよう思って応援に来てるかもしれません。また、その他の明らかな理由として、女子サッカーは男子サッカーよりプレーのスピードが遅いため、観客からすると、女子サッカーの方が男子サッカーに比べて観戦しやすいと思うんですよ。 

 

城間
なるほど〜そういう見方もあるんですね 

 

神川
沖縄の50代や60代の方は、野球をやっていた人が多い世代なので、せめて、「女の子がやっているから見に行くか」という感覚でなら見に来てくれるかもしれない。あと、試合後に選手と観客がハイタッチするなど、近い距離感で、年配の方の心をつかむような取り組みをしていきたいと考えています。 

 

城間
楽しそうですね!‥折角ですから、選手の方にもお話をお聞きしたいのですが‥ 

 

神川
いいですよ、ご紹介します。ウチには一番のベテラン選手が38歳、一番若い選手は19歳と年齢差ありますよね。そのベテラン選手に「そろそろ引退しない?」と聞くと「あと2年くらいはやります」と言って、リーグ最後の試合で4点決めたりします(笑) 

 

城間
神川社長、本日は有難うごさいました! 

 

◎プロフィール 
神川 大樹(かみかわ ひろき) 
株式会社沖縄ウィメンズスポーツクラブ 代表取締役 
鹿児島県出身 
日本体育大学 体育学部体育学科卒業 
大学卒業後に教員を経験後、大手旅行代理店勤務を経て、現職。 

 

◎詳細  
・公式サイト:http://deigos.com/ 
・Facebookページ:https://www.facebook.com/ryukyudeigos/?fref=ts 

 

インタビュー:城間勇之介
文:仲間公彦

城間勇之介 - 2016/09/15